一級建築士 【代表岩本が語る 不動産再生のコツ】
渋谷区で小規模ホテルはもう作れない?【前編】
―旅館業法の規制変遷と無人ホテル急増の背景―
Column
インバウンド需要が回復し観光客で賑わう街、渋谷。宿泊需要が高まり続ける中、「マンションの1室をリノベーションし、無人ホテルとして運営すれば収益化できるのでは?」と考える投資家や不動産オーナーも少なくないでしょう。
しかし結論から言えば、現在渋谷区内でマンション1室や小規模な戸建てを利用した「無人ホテル」を新たに作ることは、事実上不可能となりました。今年7月に施行された新条例により、これまでの規制が厳格化されたためです。(表1)
今回は、渋谷区における旅館業法の規制変遷と今後の不動産収益化に向けた戦略について2部に分けてお話しします。前編では、ホテル開発が停滞した「冬の時代」から、なぜマイクロホテルが急増したのか、その背景を紐解きます。
ここ数年、渋谷区の旅館業法は「規制強化」「大幅な緩和」、そして「再強化」と激しい変化を繰り返してきました。
2006年当時、渋谷区は風営法の適用を免れた疑似ラブホテルが乱立するのを防ぐため、「渋谷区ラブホテル建築規制条例」を制定しました。この条例では、一般のホテルとラブホテルを区別するため、全客室の3分の1以上をシングルルームにすることや、収容人数に応じた広いロビーの設置など、極めて厳格な構造・設備基準が設けられました。
地価が高く狭小な土地が多い渋谷区において、利益を生まない空間の確保は致命的です。結果として、ラブホテルだけでなく一般のホテルの新規参入すら困難になり、ホテル開発の「冬の時代」が長く続きました。
この状況を大きく変えたのが2018年、インバウンド急増によりホテル不足に対応するため、国が行った「旅館業法」の大改正です。最低客室数の制限(ホテル10室、旅館5室以上)が撤廃され「1室」から許可取得が可能となり、ICT活用によるフロント無人化も認められたのです。(表2)
同時期に「民泊新法」も施行され、渋谷区は住環境保護のため独自規制を設け、住居専用地域などでの民泊営業を実質「土日のみ」に制限しました。
これにより採算が合わなくなった民泊事業者は、規制緩和された「旅館業法」へ一斉に目を向けます。制限の厳しい民泊を避け、「365日稼働できて無人運営が可能な小規模ホテル」へシフトした結果、マンション1室などを活用した「マイクロホテル」が急増しました。
しかし、この小規模無人ホテルの急増は、渋谷区の街に新たな歪みを生むことになります。後編では、今年7月に施行された「再規制」の実態と、これからの時代に必要な不動産戦略について詳しく解説します。
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