一級建築士 【代表岩本が語る 不動産再生のコツ】
築古ビル再生の資産価値を最大化する、最適なリーシングのタイミングとは?
Column
不動産オーナーにとって、所有ビルの空室期間をいかに短縮し、高稼働を維持するかは最大の関心事と言えます。特に私たちが手がける400坪から500坪の築古ビル再生は、設計から施工完了までには、おおむね1年という長い歳月を要します。この工事期間中、オーナー側が「一刻も早くテナントを決定させて安心したい」と願うのは当然の心理ですが、リーシングをスタートさせるタイミングの舵取りは非常に繊細であり、ビルの収益性を大きく左右します。
一般的な新築大型オフィスは、仕様や設備などをイメージしやすいため、竣工のはるか前であっても図面やパースだけで十分に説明がつき、先行募集も順調に進みます。一方で、シェアオフィスなどを設ける築古ビル再生では、新築とは全く異なるアプローチが求められます。
リノベーション物件の最大の強みは、ラウンジや会議室、屋上といった魅力的なデザインが施された共用部の空気感や、コンクリート打ち放しの無骨な質感にあり、これらは図面や画面上だけでは決して表現しきれません。実際の空間を見せずに契約を急ぐと、竣工後に「思っていたイメージと違う」といったトラブルが起きたり、成約単価が下がったりします。よって建物の魅力を体感できる「内装が8〜9割完成した段階」こそが、リーシングを開始する最適なタイミングと言えます。
さらに、1階の店舗リーシングについては、より慎重な判断が必要となります。物件の工事着手時の早い段階から、配送センターや動物病院、ドラッグストアなど「1階の立地」そのものを狙うテナントからは、積極的な引き合いがあります。しかし、そういった店舗が上層階にいるオフィスワーカーにメリットをもたらし、ビル全体の魅力を高めるとは限りません。
ビル全体の収益と資産価値を最大化するためには、1階のテナントがもたらすビル全体へのメリットを見極める必要があります。1階の店舗は建物の世界観を体現し、街との接点となる最大の「顔」であることを忘れてはなりません。オーナーの立場からは、どうしても目先の空室を埋めたいという焦りが生じますが、他テナントとの親和性を重視した1階テナントの誘致が必要です。
プロジェクトの初期段階から、リーシング開始の最適解を見据え、逆算したスケジュールをあらかじめ事業計画に織り込んでおく。この戦略的な「引き付け」こそが、築古ビル再生を成功に導き、中長期にわたってビルの資産価値を最大限に引き上げます。
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