一級建築士 【代表岩本が語る 不動産再生のコツ】
57年の共同住宅を再生し、成約単価4倍を実現。
―数字で証明する、古い建物を残す「経済的価値」とは―
Column
1年ほど前に取得した、千駄ヶ谷に位置する築57年の共同住宅。その改装工事が完了し、クリエイター向けのオフィス・店舗からなる複合施設「B TRACK」として生まれ変わりました。先月、坪単価約4万円(共益費込み)で入居募集を開始したところ、わずか1ヶ月で約3分の1の区画が契約に至るという、順調な滑り出しを見せています。今回は、この再生プロジェクトの全貌を「数字」の面からお話しします。
もともとこの物件は、住宅として坪単価1.1万円程度で貸し出されていました。当時の築年数や老朽化した設備を考えると、妥当な金額かもしれません。購入後に充実した共用部と自由度の高いハーフスケルトンオフィスへとリノベーションを行い、成約単価を約4倍の坪単価4万円へと引き上げることに成功しました。
プロジェクトの検討段階では、この古い建物を「建て替えるか、残すか」という議論がありましたが、詳細な建物調査を行ったところ、コンクリートの劣化状況などを踏まえ、適切な耐震補強と大規模修繕を行えば「あと35年ほどは十分安全に活用できる」という結果が出ました。
さらに、この建物は既存不適格物件であり、現行法に合わせて建て替えてしまうと、貸出面積が約50坪も減少するという大きなデメリットがありました。一方、既存のまま補修して活用すれば、合法的に広い面積を維持したまま高い経済的メリットを生み出せます。安全性の確認に加え、この収益面積における優位性も決め手となり、既存建物の有効活用へと事業方針が定まりました。
実際の改修には、大きな手間とコストを要しました。旧耐震だったため、しっかりと耐震補強を施し、配管類もすべて新設。エレベーターの交換や屋根の解体なども含め、改修費は坪100万円ほど、総額4.5億円の投資となりました。また、ラウンジや会議室など共用部を充実させたことで、実際の貸出面積は住宅時代より減少しましたが、専有部の貸出単価が4倍に上がったことで、建物全体の賃料収入は総額で約3倍に跳ね上がる結果となりました。
私たちは半年前に「100年都市・建築プロジェクト」を立ち上げました。古い建物を適切にメンテナンスし、ヴィンテージ建築が残る魅力ある街並みを未来へ繋いでいこうという取り組みです。このプロジェクトを単なる理想論に終わらせないためには、何より「経済性」の確立が不可欠だと考えます。古い建物をしっかりと改装し、ヴィンテージの価値を理解してくれる方々に相応の対価で利用していただく。この実績を積み重ね、経済性と環境への配慮を両立させて初めて、このプロジェクトは成立し、真の価値を持ちます。
建築費が高騰する昨今、大手デベロッパーも含め、不動産市場は「新築一辺倒」から「築古ビルの再利用」へと潮目が変わりつつあります。私たちはこれからもこの潮流を牽引し、古い建物を大切に使い続けることが「当たり前」になる未来を創り出していきます。
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