一級建築士 【代表岩本が語る 不動産再生のコツ】
ナフサ不足で建築費高騰。―「ハーフスケルトン」による築古ビル再生―

Column

不動産開発の現場において、今や「建築費の高騰」は一過性の波ではなく、構造的な課題となりました。その背景にあるのは人手不足だけではありません。プラスチックや塗料、床材の原料となるナフサの価格変動や、エネルギーコストの上昇が建材価格をダイレクトに押し上げています。

この逆風下で、改めてその価値を再定義したいのが「ハーフスケルトン」での引き渡しという選択肢です。

通常、日本の賃貸オフィスは天井や壁、床をすべて綺麗に仕上げた状態で貸し出されます。しかし、働き方が多様化する中、単なる「事務作業場」の提供だけでは入居者を満足させることはできません。デザインやカルチャーにこだわりのある企業は、入居と同時に既存の仕上げを剥がし、多額の費用をかけて自分たち好みの空間へと作り直してきました。これはオーナーと入居者双方にとって、資源を無駄に消費し、コストを浪費する「負の循環」と言わざるを得ません。

ハーフスケルトンとは、空調や照明などの基幹インフラは整えつつ、天井を抜いて構造体を露出させ、壁や床をあえて「未完成」に近い状態で引き渡す手法です。これによって、入居者は無駄な解体費用や期間をかけることなく、クリエイティブな空間づくりの「ベース」として活用でき、スムーズに内装着工が可能になります。

さらに注目すべきは、退去時の「原状回復費用」が劇的に削減される点です。ハーフスケルトンに戻すということは、入居時に追加した造作を撤去するだけで済み、内装を作り直す必要がありません。(表1)

▲オフィス仕上げの比較(表1)
▲オフィス仕上げの比較(表1)
▲クリエイティブな空間づくりが魅力なハーフスケルトン
▲クリエイティブな空間づくりが魅力なハーフスケルトン

ただし、単に仕上げを省いて貸せばいいわけではありません。入居者が理想とする空間を実現するには、通常の内装監理より手間がかかります。また、剥き出しのコンクリートは仕上げが均一ではなく、特有のムラも生じます。これらを「欠陥」ではなく古いビル特有の「味」と捉えてもらう、入居者との丁寧なコミュニケーションも欠かせません。プロの知見でこれらのハードルをクリアすれば、初期投資を抑えつつ、一般的なオフィスを上回る高単価な賃料設定が可能になります。

最近では、会議室や家具まで作り込んで貸し出す「セットアップオフィス」が流行ですが、建築費が高騰する今だからこそ、「未完成」を価値に変え、古いビルを再生させる。「ハーフスケルトン」は、これからの時代におけるオフィス再生のスタンダードになると確信しています。

岩本  裕
一級建築士

1973生まれ、東京都市大学(旧武蔵工業大学)工学部建築学科卒業。新卒で入社した五洋建設では現場監督とアメフト選手として活動。その後マンションデベロッパーにて土地仕入から企画販売を一貫して経験。リーマンショックを契機に、不景気に強いスモールオフィスビジネスに着目し、2009年8月に当社設立、代表取締役就任。一級建築士の知識と運営経験を活かし、東京都心部において古ビルを有効活用する事で多くの不動産を再生。その実績は累計100棟に及ぶ(2024年7月現在)。2023年6月に東証グロース市場へ上場し、新たなステージで挑戦を続けている。趣味はパワーリフティング(ベンチプレスはMAX160kg)。

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