一級建築士 【代表岩本が語る 不動産再生のコツ】
「検査済証のない物件」その価値を上げるには?再発行は可能?

Column

建築確認後、完了検査を受けて発行される「検査済証」は、建築物が建築基準法に適合していることを示す重要な証明書です。

昭和後半の検査済証取得率は約30%、平成12年には約50%、平成28年には90%以上に達し、現在ではほぼすべての建物が取得していると言われています。過去には、建築基準法上の完了検査を受ける義務があったものの、罰則がなかったため、実際には検査を受けずに使用されている建物が多く存在していました。

さらに、昭和後半の建設ラッシュ時には、行政の検査体制が整っておらず、それも取得率の低さに拍車をかけていました。平成以降、民間指定検査機関の導入や、金融機関の融資条件の厳格化、地震や欠陥住宅問題などを背景に、完了検査の重要性が見直され、検査済証の取得率は大きく向上しています。

 

こうした経緯から、築年数の古い物件では検査済証が未取得のままの物件が多く見られます。しかし、売却を検討する際には、検査済証がないことがネックとなり、順法性に不安を抱かれたり、収支計画に支障をきたしたりするため、売却価格が通常の物件よりも下がる傾向があります。

そのため、検査済証のない物件に対しては、可能であれば再取得や適切な是正工事を行い、資産価値を高めておくことが望まれます。検査済証がない物件のタイプと対応方法として、検査済証が存在しないケースは大きく次の2つに分けられます。(表1)

▲(表1)
▲(表1)

①完了検査を受けていないケース
建築確認の図面通りに建物を是正し、第三者機関による適合認定検査を受けることで、「適合証明書」が発行されます。これは検査済証と同等の法的効力を持ち、建物の順法性を証明する手段となります。

②完了検査を受けたが検査済証を紛失したケース
この場合、自治体から「記載事項証明書」を取得することで、検査済証がかつて発行された事実を証明できますが、当時の建物に対し検査済証の再発行は不可能となります。

いずれの場合でも、増築などを伴う改修を行うことで、改修後の建物に対して新たに検査済証を取得することが可能です。
不動産価格を大きく左右する「検査済証」。取得していない物件でも、諦めずに再取得にチャレンジしてみてください。

▲増築により検査済証を再発行した 築36年「LANTIQUE BY IOQ」
▲増築により検査済証を再発行した 築36年「LANTIQUE BY IOQ」
岩本  裕
一級建築士

1973生まれ、東京都市大学(旧武蔵工業大学)工学部建築学科卒業。新卒で入社した五洋建設では現場監督とアメフト選手として活動。その後マンションデベロッパーにて土地仕入から企画販売を一貫して経験。リーマンショックを契機に、不景気に強いスモールオフィスビジネスに着目し、2009年8月に当社設立、代表取締役就任。一級建築士の知識と運営経験を活かし、東京都心部において古ビルを有効活用する事で多くの不動産を再生。その実績は累計100棟に及ぶ(2024年7月現在)。2023年6月に東証グロース市場へ上場し、新たなステージで挑戦を続けている。趣味はパワーリフティング(ベンチプレスは155kg)とバスフィッシング。

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