【代表岩本が語る 不動産再生のコツ】
駐車場附置義務は必要か?
築古ビル再生に本当に必要な駐車場附置義務とは

Column

一定規模の建物を新築する場合には、その建物の規模や用途に応じて駐車場の附置義務があり、その制度は時代の流れと共に変化しています。
駐車場の附置義務制度は、マイカー所有率が増加した高度成長期に整備されたものがほとんどであり、現在におけるカーシェアリングの普及や若者の車離れなどによる利用低下実態と制度が合致していないのが事実です。
今回は、築古ビル再生に本当に必要な駐車場附置義務についてお話ししたいと思います。

築古ビルを正しく再生し、運用するには過去に遡り新築した当時の附置義務台数を満たす必要があります。仮に地下の駐車場を居室化したい場合、当時の附置義務台数を満たした上で、余剰スペースがあればそこを居室化することが可能となります。(図1)

▲図1 地下駐車場部分を事務所に変更した「Sreed EBISU 2」
▲図1 地下駐車場部分を事務所に変更した「Sreed EBISU 2」

問題になるのは、当時機械式駐車場で附置義務を満たしている場合です。

例えば20年以上前の機械式駐車場は、現在の中型車以下の車を想定した場合が多く、最近の大型車は停めることができません。
しかし、機械式駐車場を大型車用に変更するのは膨大な費用が掛かる場合や、物理的にパレットが入らない場合が多く、利用価値が低いにも関わらず、駐車場附置義務を満たすために、旧式機械式駐車場をそのまま残している築古ビルもよく見かけます。

利用頻度の低い旧式機械式駐車場を残すなら、EV車用の充電設備を導入した平置き駐車場を数台でも設置した方が、環境にも収益性においてもメリットがありますし、現在の利用実態にも合っています。
また最近では新しい交通手段として、シェアサイクルや電動キックボードが急速に普及しており、そのような駐輪場を設置するのも需要に合っています。(写真2)

▲写真2 シェアサイクル置き場を設置した「PORTAL POINT HARAJUKU」
▲写真2 シェアサイクル置き場を設置した「PORTAL POINT HARAJUKU」

新築で建てた都心事務所ビルの駐車場がガラガラで、前面の歩道には違法駐輪などが乱立する光景をよく目にします。逆に郊外のショッピングセンターでは、週末になると駐車場待ちの行列が周辺幹線道路まで延び、周辺住民の迷惑となる光景も見受けられます。

一部の都市では駐車場附置義務制度が見直されつつありますが、交通インフラの変化スピードは早く、実態に合致していないのが現実です。
環境保護や持続可能な都市づくりを行うためにも、各エリア毎の駐車場利用実態や交通利用実態を調査し、その実態に基づいた駐車場附置義務に改正する必要があるでしょう。

築古中小規模ビルの有効利活用に関するご相談はお気軽にご連絡ください。

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岩本  裕
一級建築士

東京都市大学(旧武蔵工業大学)工学部建築学科卒業
大手ゼネコンでは、主にマンション工事の現場監督とアメフト選手として活動、 その後大手マンションデベロッパーと新興デベロッパーにて土地の仕入れから企画販売を一貫して経験。2009年8月、「the SOHO」の運営を機に当社設立。代表取締役就任、2021年7月サイバーエージェントグループに参画、現在に至る。
趣味:週3回以上のパワーリフティング(ベンチプレスは155㎏)、バスフィッシング

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