一級建築士 【代表岩本が語る 不動産再生のコツ】
「100年都市・建築プロジェクト」始動【後編】
市場のルールを変革し、歴史が息づく街並みを次世代へ
Column
中編では、築古ビル再生における技術と企画の重要性についてお話ししました。このプロジェクトを社会実装し定着させるためには、さらに乗り越えるべき高い壁があります。それは、日本に根強く残る「築浅信仰」と、それを助長している金融や法律面における「市場のルール」です。
日本の不動産市場では、築40年や50年といった法定耐用年数に近い築古ビルの価値をゼロとみなしたり、融資の対象から外したりする慣習が依然として根強く残っています。高い技術力で安全性を担保し、優れた企画によって高い収益性を誇っていても「評価のものさし」が変わらなければ、建物再生は広がりません。私たちがこのプロジェクトを通じて実現したいのは、こうした市場の古いルールそのものを、時代に合わせてアップデートしていくことです。
その足掛かりとして、大手デベロッパーとの共同事業やファンドの組成を通じて、大型案件の再生実績を積み上げていきます。確かな実績を示すことこそが、金融機関や投資家の方々の意識を変容させていく最大の武器になると考えているからです。
その先に見据えているのは、新築を優遇する建築基準法や消防法、税制といった法律面のルールに対し、既存ビルの活用を促進するような見直しを働きかけるムーブメントを起こしていくことです。建物を長く大切に使い続けることが、環境的・経済的にも正当に評価される仕組みを創り上げ、社会実装すること。それが私たちの使命です。
こうした挑戦の先には、理想とする街の姿があります。それは、以前触れたシドニーのように、新旧の建物が調和し、歴史が目に見えるかたちで重層的に積み重なった街並みです。100年前の面影を残す外観、その内部には最新のテクノロジーや感性が吹き込まれた空間。そんな建物が街のあちこちに息づき、人々に愛され続ける風景です。
新築一辺倒だった日本の都市開発は、いま、大きな転換点を迎えています。建築費の高騰や環境負荷という課題を、逆風ではなく「成熟した街づくり」の好機と捉え直す。このプロジェクトを通じて、次世代の子供たちに、より豊かで深みのある「100年続く都市」を引き継いでいきたいと考えています。
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