一級建築士 【代表岩本が語る 不動産再生のコツ】
「100年都市・建築プロジェクト」始動【前編】
「新築一辺倒」の終焉と、建物の命を問い直す転換期

Column

当社は「100年都市・建築プロジェクト」を始動しました。古い建物を壊しては新しく建てるといった従来の街づくりを見直し、今ある建物を100年大切に使い続ける持続可能な社会の実現を目指します。今回よりプロジェクトの意義と展望について3部構成で解説します。まず前編では、日本の都市開発が迎えた歴史的な転換期と、建物の「寿命」を巡る矛盾についてお伝えします。

現在、日本の都市開発は大きな節目に立っています。これまで当たり前だった大規模な再開発計画が、東京都心部でさえも中止や延期が相次いでいます。背景にあるのは、記録的な「建築費の高騰」です。原材料費の上昇や深刻な人手不足、輸送コストの増大が重なり、新築費用は跳ね上がっています。

これまで不動産業界は、古い建物を壊して新たなビルを建てる「スクラップ&ビルド」の論理で成長してきましたが、もはや「新築なら必ず収益が出る」という計算は成り立ちません。駅前の象徴的なプロジェクトが足踏みする現状は、新築一辺倒だった開発モデルが限界を迎え、新たな手法への移行が求められている証といえます。

しかし、こうした転換期にありながら、私たちは不可解な現実に直面しています。まだ十分に使える築古ビルが、都心の至る所で解体され続けている事実です。当社の調査では、2023年から2025年の3年間における東京都心5区で解体された商業ビルのうち、実に55%が鉄筋コンクリート造の法定耐用年数50年未満で解体されています。(表1)

▲(表1)
▲(表1)

解体された建物の多くは現行の耐震基準をクリアしており、メイン部材であるコンクリートの寿命は本来100年程度あると言われています。つまり、安全性に問題がなく、あと数十年は現役でいられるはずのビルが寿命の半分も全うせず瓦礫となっているのです。

建築費が上がり、建て替えや新築再開発が困難になった今、私たちはこの矛盾をいつまで続けるのでしょうか。環境保護と経済的な合理性を両立するためにも、今ある建物を修繕し、100年使い続ける道こそがこれからの最適解となるのではないでしょうか。

 

次回、中編では「建物の長寿命化」がもたらす環境メリットと、それを実現するために乗り越えるべき障害について深掘りします。

▲100年都市・建築プロジェクト対象物件「OMB東麻布」(築62年)
▲100年都市・建築プロジェクト対象物件「OMB東麻布」(築62年)
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