一級建築士 【代表岩本が語る 不動産再生のコツ】
リノベーションを学ぶならシドニーへ
ー築古ビルを活かした街づくりから見えた保存と開発の最前線ー
Column
これまでNY、LA、香港、シンガポール、バルセロナなど世界中の都市を訪れ、築古建物を活かしたリノベーション事例を学んできましたが、今回のシドニー視察はこれまでにないほどの気づきと刺激を得る機会となりました。
現地では、倉庫や築古ビルを活用したホテル、商業施設、飲食店などを中心に30件以上のプロジェクトを見学しました。中でも特に印象的だったのが、築110年の旧醸造所を大胆にリノベーションした「オールドクレアホテル」です。
外観や一部構造体を巧みに保存しつつ、現代的なホテルデザインを融合させた空間は歴史的な重みと新しさが共存する非常にセンスの高いものでした。こうした建築的なバランス感覚は、日本の再生プロジェクトにも通じるヒントが多くあります。
さらに印象的だったのは、シドニーという街全体が築100年を超える建物を数多く活かしながら、活気あふれる都市として成り立っている点です。その背景には、古い建物の再利用を後押しする法律や制度の存在があります。
例えば、歴史的な外観を保存することで容積率の割増や用途変更が認められやすくなる仕組み、優れたデザイン提案に対しては特典が与えられる制度など、再生開発を後押しする実務的かつ戦略的な政策が整備されています。(表1)
一方、日本では文化財登録など「保存」に重点が置かれる傾向が強く、築古ビルの開発的活用という視点では、地震国故の難易度もあり制度的な課題も残ります。建築コストが高騰し続ける今、日本でもシドニーのように「保存と開発」を両立させる都市制度の導入が、次の時代の街づくりに不可欠となるのではないでしょうか。
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