【代表岩本が語る 不動産再生のコツ】
第46回 「既存不適格建築物」について考える
~既存不適格は悪なのか?~
Column
大阪北区のクリニック放火火災事件を受け、全国の消防が雑居ビルを対象に緊急点検を開始しました。
問題となっている点は、3階以上の建物で不特定多数が入る雑居ビルでありながら、階段が1か所設置(2方向避難が不可能)であった「既存不適格建築物」の物件です。
今回は、この問題を取り上げます。
当社では、主に築古ビルを取り扱っていますが、なかには多くの既存不適格事項に該当するケースがあります。(表1)
① 容積超過については、ほぼ建て替え以外に解消方法はありません。
② 旧耐震はその程度により補強費用等が変わりますが、既存テナントが残ったままでも可能な場合もあります。
③ 遮炎・遮煙については、簡易的なシャッター等を付けて対応できる場合が多く、比較的容易に改善できます。
④ 排煙窓については、大部分のサッシ付け替え等が発生するため、入居中の場合は対応が困難で多額の費用も掛かります。
冒頭の雑居ビル二方向避難の件も含め、既存不適格事項を解消するには、入居中では改善できない事項が多数あり、多額の費用もかかります。そのため、現行法には適していないが違法ではない「既存不適格建築物」という名称が出来たのです。
今回の悪質極まりない事件が起こったことで、既存不適格建築物を確認する動きが高まっていますが、既存不適格建築物を完全に是正するには「空ビル」もしくは「建て替え」をすることが前提となりますが、簡単には解約できない「普通賃貸借契約」が残っている限り、法律面コスト面からも実行は非常に困難です。
一方で、名店や老舗と呼ばれるお店は古いビルに入居し続けているケースが多く、昔と変わらない賃料だからこそ、価格を上げずに素晴らしい商品を提供できている側面もあります。
そして、古くからの名店や名建築を守りながら素晴らしい街並みを維持する事は、カーボンニュートラルに向けた、今後の街づくりには欠かせない観点です。
既存不適格物件は決して悪ではありません。
消防上の現状把握や既存不適格事項の是正が義務付けられることになれば、賃貸契約の法改正と名店を守るための補助、築古ビルオーナーの改修費補助なども必要となるでしょう。
築古中小規模ビルの有効利活用に関するご相談はお気軽にご連絡ください。
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