【代表岩本が語る 不動産再生のコツ】
ビルの価値を左右する1階テナントの重要性
~最も高額賃料の取れるフロア構成について実例をもとに解説~
Column
東京都心では大規模ビルの開発が活発に進む中、築古中小規模ビルは老朽化などに伴い、今後ますます空室の懸念や競争力の低下が危ぶまれており、他ビルとの差別化による収益確保には工夫が必要です。
そこで今回は、競争力が低下している築古ビルを1棟丸ごとリノベーションする際に、最も高額賃料の取れるフロア構成について、テナントの選定方法と外観の重要性を解説します。
築古ビルにおいて、1階のみテナントが入り、上階の空室が目立つ事例がよくあります。1階部分に運送会社の倉庫やデリバリーサービス会社、居酒屋などが入居すると、上階の入居者にとっては、騒音などデメリットが多いことに加え、外観の印象がマイナスになることがあります。たとえ、1階テナントを高額賃料で貸し出せたとしても、上階のリーシングに苦戦し、ビル全体の収益性が落ちる場合は、ビルの「顔」となる1階テナントの選定を見直す必要があります。
当社で手掛けた、中目黒にある、築50年鉄骨造地上5階建てのビル、「THE WORKS」(上写真)では、1階の賃料を周辺相場よりも安めに設定し、レストランを誘致しました。結果、1階にデザイン性の高いレストランがあることで、2階~5階のオフィスの付加価値となり、オフィスを周辺相場の1.5倍の賃料で賃貸することができたため、ビル全体では高収益化が成功しました。
また、1階テナントを早期段階で決定することで、ビル全体の外観デザインと上階のリーシングを同時に進めることができます。そうすることで、上階の入居者に対してリノベーションによってビル全体の価値が上がった完成イメージを具体的に伝えることができるため、入居促進へと繋がります。この場合、入居後に、1階テナントが思っていたものと違ったという懸念や、入居者からの反対などで、1階テナントの誘致に制限がかかるなどの問題を防ぐことも可能です。
当社では、1階テナントに対して、上階の入居者にレストランの利用割引やイベントの招待などを提供することを入居条件として義務付けており、入居者は1階テナントを打合せで利用するなど、共用部のように身近に利用することができます。また、ビル全体に活気を生むことで、周辺環境も巻き込み、ビルの資産価値向上へと繋がります。1階テナントの坪単価だけに目を向けるのではなく、計画的なリーシングと外観デザインによって、ビル全体の高収益化の実現が可能となるのです。
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